私たち人間がその他の哺乳類と大きく違っている点として、知能が高いことと手先が器用なことがよく挙げらます。
猿から進化したと言われている私たち人間は猿よりも手先が器用で賢いために、現在私たちに身の回りに溢れているような素晴らしい文化を築くことができました。
完全に二足で自立でき、両手を自由自在に使うことができるのは人間だけですが、この「両手を自由自在に使う」ために一役買っているのが今日紹介する肩甲骨です。
肩関節は皆さんもよく知っているように、私たちの体の中で最も自由に動かすことが出来る(可動域が広い)関節ですが、実際にどんな構造になっているか考えたことはありますか?
今日はそんな肩甲骨の秘密について紹介していきます!
筋トレにも肩甲骨はかなり重要な部分なので、この機会に是非覚えておきましょう!
目次
そもそも骨格・関節とは?基礎知識
私たちの身体の骨格は、
- Axial (胴体)
- Appendicular (四肢)
に分類できます。
写真を見てもらえば分かる通り、胴体は背骨を軸にRib cage(胸郭)、Skull(頭蓋骨)といったように骨格で箱のようなものを作っていますよね。
これらは心臓や脳みそなどの大切な臓器を守るために存在している骨格と言えます。
それに対して四肢の骨格は長い棒状の骨で形成されています。
これらは臓器を守るために作られた胴体とは違い、Mobility(可動性)を重要視して作られているからです。
皆さんの身体で実際に試して頂ければわかりますが、肘や膝の関節は平面でしか運動できない蝶番型(ドアの取付具)の関節ですが、
これらに対して肩や股関節といった関節は円を描くように自由自在に運動できます。
肩の構造や働き・仕組みについて
これらの2つの関節(肩、股)のなかでも特に肩の可動性は非常に優れています。
腕を目の前で組んだり、高い所にあるものに手を伸ばしたり、背中の痒い部分を掻いたり・・・このような芸当は肩ならではの動きですよね。
一体、肩はなぜ股関節よりも優れた可動性を持つことができたのでしょうか。
それは肩が、
- 肩関節(肩甲骨-上腕骨)
- 肩鎖関節(肩甲骨-鎖骨)
- 胸鎖関節(鎖骨-胸骨)
という3つの可動性が高い関節から成り立っているからです。
まずは、今回肩関節の比較対象として挙げている股関節について考えていきましょう。
股関節とは
股関節は骨盤~大腿骨で接続されていて、基本的には骨盤を起点に大腿骨(もも)を動かすための関節です。
骨盤は寛骨と仙骨という骨で形成されています。
仙骨は青色で塗られているため、可動性のない胴体を構成している骨ですが、寛骨は白色のため四肢扱いをされています。
この2つの骨は仙腸関節と呼ばれる関節で繋がていますが、ほとんど動くことができません。
それに対して肩はどうなっているのでしょうか。
肩の仕組み
まず、胴体である胸郭があり、その背面に肩甲骨があります。この肩甲骨は鎖骨により胴体である胸郭につながっています。
これらは図で白く書かれているので四肢ですよね。
つまり、股関節における仙骨が肩関節での胸郭で、寛骨が肩甲骨と鎖骨に対応していると言うことができるのではないでしょうか。
そして、この2つの関節の大きな違いは、股関節では仙腸関節がまったく動かないのに対して、肩関節では肩甲骨と鎖骨が大きく動くということです。
大きく円を描くように運動できる肩関節そのものが肩甲骨と鎖骨によって、動くことが出来るのが肩関節の可動性の秘密です。
まさに、城壁に取り付けられていた大砲が戦車となり、移動しながら自由自在に大砲を打てるようになったかのような自由さを持っています。
ちょっとわかりづらい例えですいません笑
肩甲骨の動きや運動
肩関節の運動をサポートしている肩甲骨ですが、実際にどのように動くのでしょうか。
基本的な3方向の動きを紹介します。
挙上下制
肩甲骨が上下に動く運動です。
いわゆる肩を上下させる、首をすぼめるといった運動がこの挙上と下制にあたります。
筋トレでは僧帽筋上部を鍛えるシュラッグで挙上動作を、ディップスやディクラインベンチプレスなどで、プッシュ動作のサポートとして肩甲骨の下制を発見することができます。
外転内転
肩甲骨を寄せる、広げるといった動作になります。
挙上下制の運動は誰でも出来るように簡単ですが、外転内転は実際にトレーニングを積んでいないと意識しづらい運動です。
この運動をしっかりとマスターすると、筋トレで上手に筋肉に効かせることができ、また怪我の予防になります。
後ほど、この運動の仕方について解説するので参考にしてください。
上方下方回旋
遠くのものや高いところに手を伸ばした時に、肩甲骨が腕を伸ばしている方向に従い回旋します。
この運動により私たちは腕を遠くに伸ばすことが出来ます。
ショルダープレスなどでよく発見できる運動です。
上方向への方の可動域が出ない方はこの運動に問題がある可能性があるので、肩甲骨周辺の筋肉をほぐすことで改善することができます。
おすすめの肩甲骨の寄せ方
特に筋トレにおいて重要な動作である肩甲骨の外転内転(寄せる]をしっかりと学習しましょう!
これができないと肩関節を怪我したり、偏った筋肉を鍛えてしまったりします。
プッシュ系種目での肩甲骨内転
ベンチプレスをはじめとするプッシュ系種目では肩甲骨をしっかりと寄せることで胸を高く保ち、肩関節の怪我をさけることができます。
ベンチプレスをおこなう場合の肩甲骨の寄せ方を紹介します。
①スタートポジションを決める前に必ず肩を後方に引き肩甲骨を寄せます。胸骨や剣状突起を高くするイメージ。
②バーを握りスタートポジションまで持ってきたら、バーをハの字にへし曲げるように上腕を少し外旋させる方向に力を入れると肩甲骨を寄せやすいです。
③バーを胸に下ろしますが、この際にバーを下ろすのではなく胸をバーに近づけるイメージを持つと胸を高く保つことができて、肩甲骨の内転をキープすることができます。
④バーを落ち上げる際も同じで、バーを押し上げるのではなく胸から引き離すようなイメージを持ちましょう。
たまにバーを高く挙げすぎで肩甲骨が外転してしまう(広がる)人がいるのですが、これが怪我の原因となってしまいます。
肘が伸び切る場所がトップポジションですので、それ以上押し上げないようにしましょう。
プル系での肩甲骨外転内転
ラットプルダウンなどの背中を鍛える種目では腕だけでなく、しっかりと肩甲骨からウエイトを引き上げることで背中全体を満遍なく鍛えることができます。
肩甲骨の内転をせずに背中を鍛えるとただ広いだけの厚みのない背中になってしまいます。
ラットプルダウンを例に上げ肩甲骨の動作を説明します。
①まずバーを握りベンチにセットしたら、上腕を内旋させます。
これにより肩甲骨が外転するので、少し腕が伸びたような感じになります。肩甲骨を寄せる動作をするためには、まずしっかりと肩甲骨を開きましょう。
②続いて上腕を外旋させるようにして肩甲骨を少し内転させます。これを初動にしてバーを一気に引きます。
③ボトムポジションではバーを下げる意識ではなく、胸をバーに近づけるように意識することで、肩甲骨の内転を使いしっかりと引ききることができます。
④バーを戻す時には少しづつ上腕を内旋させ肩甲骨を外転(広げる)させながら戻すようにしましょう。
ポージングでの肩甲骨外転
ボディビルやフィジーク競技でのリラックスポーズ、またボディビル独特のラットスプレッドなどのポージングでは肩甲骨の外転をしっかりとマスターしている必要があります。
これらの競技者ではない人も練習することで肩甲骨の動きを学習でき、また背中を美しく見せることができます。
是非、練習してください。
①脚をまず初めに決めたら、肩甲骨を開きます。腕を少し広げ、上腕に力を入れながら内旋するようにすることで肩甲骨を開くことができます。
②できない場合は鏡を見ながら何度も練習しましょう。個人によって力を入れるイメージが異なりますので、自分にあったイメージを探し出しましょう。
肩甲骨の内転外転運動は筋トレにおいて非常に重要ですので、しっかりとマスターしてください。
肩や肩甲骨の痛みとケガ予防
肩は優秀すぎる可動性を持つために、非常に不安定な関節となっています。
筋トレで肩を脱臼してしまう人、捻挫していしまう人を沢山見てきました。
通常、関節には靭帯と呼ばれる組織があります。
コラーゲンで作られている靭帯は筋肉の様に収縮はしませんが、骨から骨へ繋がっていて関節がはずれないようにサポートするテーピングのような役割をしています。
肩関節ではこの靭帯に加えて、ローテーターカフと呼ばれる筋肉があります。
いわゆるインナーマッスルと呼ばれるこれらの筋肉の主な働きは骨格を動かすことではなく、靭帯の様に関節をサポートする役割をしています。
これらのローテーターカフは靭帯とは違い筋肉ですので鍛えることができます。
不安定で怪我をしやすい肩関節ですが、このローテーターカフをしっかり鍛えることで安定性を強化することができます!
ローテーターカフを鍛える方法
この、
- 肩甲下筋
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小胸筋
4つで構成されているローテーターカフは主に上腕の回旋動作で鍛えることができます。
インターナルローテーション
ケーブルやエラスティックバンドを用いて行います。
ケーブルの高さを自分の肘の高さに設定します。
肘を90度に折り曲げた状態でグリップを持ち、腕相撲の様にケーブルを内側に引きます。
この時、肩甲骨の位置は動かさないで上腕を回旋させる運動だけでウエイトをあげます。
エクスターナルローテーション
インターナルローテーションの反対の運動です。
グリップを握ったら外側に回旋させます。同様に肩甲骨は動かさず上腕を回旋させるだけです。
ビデオがあるので参考にしてください。
これらの種目のバリエーションとして、ショルダーホーンやベンチなどを用いて肘を肩の高さまで上げた状態で上腕を内旋、外旋させることもできます。
とにかく、様々な角度で上腕の回旋動作をおこないましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
肩甲骨は人間が器用な動作をするために欠かせない筋肉です。
筋トレをおこなう時にも非常に重要なパーツなので、しっかりと理解を深め正しい運動をできるようにしましょう。
また、忘れてはいけないのが肩は可動性が高いために非常に怪我をしやすい部位であるということです。
しっかりとローテーターカフを鍛えて健全な筋トレライフを楽しみましょう!
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