キネティックチェーンの原理。運動連鎖を用いたおすすめのトレーニング

よく、スポーツ目的で筋トレをしている方から、

  • 〇〇が出来るようになりたいんだけど、何筋を鍛えればいいの?
  • サッカーでは大腿四頭筋が大切だから大腿四頭筋を鍛えたい。どんなトレーニングをすればいいの?

と質問をいただくことがあります。

しかし、正直なところこれらの質問には答えられないというのが事実です。

というのも、人間の体には約600個近い筋肉が存在し、歩くだけでも約200個の筋肉が動員すると言われています。

スポーツのようなに動きが複雑になればなるほど動員する筋肉の数は多くなり、それらを全て把握して何筋を鍛えることが効果的、と断言することは出来ません

そこで今回紹介する方法は、キネティックチェーン「動作を強化する」トレーニングです。

スポーツをしていて筋トレを取り入れようと考えている人は少し参考にしてみてください。

キネティックチェーンとは運動連鎖

キネティックチェーンとは運動連鎖を意味します。

例えば、コンタクト競技で押し合う(アメフト、ラグビーなど)ことを強化したいのであれば、「押す」トレーニングをします。

走るのが早くなりたいのであれば、走るために必要な、「地面を押す」動作と「足を持ち上げる」動作のトレーニングをします。

この動作をと鍛えるトレーニングを、ファンクショナルトレーニング、もしくはアスレティックトレーニングなどと呼びます。

このファンクショナルトレーニングでとても大切なのが「キネティックチェーン」という考え方です。

上記でも紹介したように、歩くだけでも200個以上の筋肉が動員しますが、これらはあなたが意識的に200個以上の筋肉を動かしているわけではありませんよね?

それは、歩くために必要な筋肉を脳が既に理解しているために、「歩こう」と考えるだけでそれに必要な200個以上の筋肉が動くのです。

これが運動連鎖、つまりキネティックチェーンです。

このキネティックチェーンを鍛えることで、正しい運動を学習し、その動作を強化することが出来ます。

フィットネストレーニングとの違い

このようなファンクショナルトレーニングに対して、筋肉の一つ一つを意識してトレーニングするのがボディビルダーが行っているようなフィットネストレーニングです。

彼らは筋肉一つ一つを別々で鍛え上げることで、ステージに立った時に美しいディフィニション(筋肉のキレ)を表現することができます。

それはそれで素晴らしい技術ですが、おそらくスポーツを目的で行っている人にとっては、求めている目的(スポーツにおけるパフォーマンスの向上)とは違っているはずです。

まずは、どちらを目的に行っているのかを明確にしましょう。

キネティックチェーンの種類

キネティックチェーンは大きく2種類に分類することが出来ます。

それが

  • OKC(オープンキネティックチェーン)
  • CKC(クローズキネティックチェーン)

この2つです。

OKC(オープンキネティックチェーン)

体の中心で力を産み出し、四肢に伝えていく運動連鎖です。

これだけではちょっとわかりづらいので例を挙げると、野球の投球動作などがこのOKCに当てはまります。

ボールをなるべく鋭く放るためには、ボールを握っている手、更に言うとボールを押し込む指先が速く振れる必要があります。

この体の末端部位を強く動かす運動がOKCです。

投球動作では、下半身ないし体幹部で生み出した力を最終的に末端部位である指先に伝達します。

このような運動連鎖を鍛える場合には、同じように体の末端部位が動くトレーニングを行なう必要があります。

背筋力であれば、体幹部(胴体)が動く懸垂よりも、グリップ(手)が動くラットプルダウンのほうが投球の改善には適したトレーニングといえます。

CKC(クローズキネティックチェーン)

逆に、四肢で生み出した力を胴体に伝えていく運動連鎖が、CKC(クローズキネティックチェーン)です。

手や足などが固定されて(同じ位置を保つ)胴体、つまり身体全体が動く運動というと、体操競技、陸上トラック競技などが例として挙げられます。

陸上競技で走る際には、足で地面を押すことにより身体が前進するので、「四肢で生み出した力を胴体に伝えていく運動連鎖」に当てはまります。

ですので、走力を鍛える際には四肢が動くレッグプレスよりも、胴体が動くスクワットが適しているのです。

キネティックチェーンを応用したトレーニング

キネティックチェーンを鍛える、というのは神経系を鍛えることと同義です。

正しい力の入れ方を覚える」といったほうがわかりやすいかもしれませんね。

では、実際にキネティックチェーンの考え方を応用するとどんなトレーニングが出来るのか見ていきましょう。

ニーイントーアウトを治すトレーニング

膝(ニー)は本来、つま先(トー)が向いている方向へ屈折しなければなりません。

ニーイントーアウトは、膝が内側へ崩れ、つま先が外を向いてしまっている状態ですが、この状態では膝の内側を支えている内側靭帯が伸びてしまい、怪我の原因となってしまう危険な姿勢なんです。

この間違った姿勢を改善するために、両膝をトレーニングバンドで巻きつけてスクワットやデッドリフトを行ってみましょう。

バンドが膝を内側へ引っ張りますが、それに抵抗するように膝を外へ開くような力を入れるよう意識してください。

これにより、膝を曲げる際には中殿筋などの膝を正しい方向へ導く筋群が連動するようになり、ニーイントーアウトを改善することが出来ます。

より効果的なプッシュトレーニング

コンタクトスポーツ(アメフト、ラグビー、相撲)などでは、相手を強く押し込む力が求められます。

ベンチプレスが代表的なプッシュトレーニングですが、ベンチにもたれかかった状態では主に肩周辺の筋肉しか動員しません。

しかし、本来スポーツの現場では背中を支えてくれるベンチのようなものはありません。

ここで、上半身(腕)で相手を押す時に一緒に連動してほしいのは主に”臀部”の筋肉です。

押す動作に連動して臀部の筋肉が強く収縮するようになれば、下半身が安定し逆に上体が煽られてしまうことが改善できます。

ブリッジプレスは主に臀部の筋群で下半身を安定させながら行なうプレス運動です。

普段のプレストレーニングに是非、加えてみてください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

キネティックチェーンの応用は少々複雑ですが、これが理解できないとスポーツのためのファンクショナルトレーニング、ボディビルのためのフィットネストレーニングの区別が付きません。

スポーツ選手であれば、これについては常に考えるべきですし、コーチやトレーナーの方は必ず理解するべきですので、決して諦めずキネティックチェーン、そしてファンクショナルトレーニングへの理解を是非、深めていってください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です